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大地の恋
第1章 幼馴染みの弊害
「…父親が迎えに来るならそう言っとけよな。こっちだって心の準備があるっつーの」


誰に向けたわけでもない愚痴を吐き出しながら一人歩く。
少なからず今日の出来事は今まで一歩も動けなかった俺の心を動かすものだった。


それが良いものか悪いものかは分からないけど…


昔のように荒れ狂う波が伴わないのは大人になった証拠だろうか、それとも年をとったということだろうか。


又は知らぬうちに本当は前進できていたのか…


「パパか…」


副担の指輪が脳裏に蘇った。
そして真優の顔も…
プラチナのペアリングを同時に見ることがなかっただけ救いだろうか。


そんな事を考える自分が女々しく情けない。


「…はぁ」




ため息を吐くと幸せが逃げるという。
なら、幸せなんてこの体に一滴もない俺から逃げていくのは何なんだろう。



俺は今こんなにも空っぽなのに。



でも…まだ俺は気づいていない。
運命の歯車が再び動き出す準備を始めていることに。



荒れた大地に一輪の花が咲くのはそう遠い話じゃないということに。

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