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大地の恋
第2章 若葉の頃
「じゃあじっとしてて」


「はい」


橋本さんが立ち止まりおとなしくなる。
そのまま襟足に顔を近づけ半透明のロックピンを口に含み糸切り歯で噛み切った。


「ホラ」


「………」



橋本さんが固まっている。


「橋本さん?」


「………」


橋本さんは困ったように眉を下げ俺を見上げた。


「切れたけど」


「………ありがとうございます。板橋さん歯が丈夫なんですね」


「…そうなのか?」


「はい、すごい特技だと思います」


橋本さんはさっきとは一変元気がない。
どうしたのかと一瞬考え、何も考えずにしてしまった行動だがそれは女の子に対してあまりにも配慮がなかったのではないかと慌てて思う。




「ごめん、何も考えずにしちまったけど今のは嫌だよな」


「えっ……」


「あー…俺男ばっかの四人兄弟だから女の子に対しての配慮が欠けてるみたいで…ホントごめん」



「い、いえ」


「橋本さん見てると一番下の弟思い出して」


「お、弟…ですか」


「あ、いや。なんか思わず面倒みたくなるっつー意味でね」


「………」


「橋本さんて末っ子だろ」


危なっかしい子を放っておけないのは長男の宿命なのだろうか。
橋本さんを見てるとついつい世話を焼きたくなってしまう。


そしてきっとこの子はそんな風に兄姉に可愛がられてきた……



「ハズレです。私、長女なんです」


「………」


「しかも五人姉弟の」


「えっ」


橋本さんが悪戯に笑う。












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