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大地の恋
第2章 若葉の頃
金曜日、会社の飲み会で酒を飲みながら先輩と話していると潰れた同僚を甲斐甲斐しく介抱する橋本さんを見つける。


「………」


「ん?どうした?」


「あ、いや…橋本さんが林の面倒見てると思って」


「あー…チカちゃんね。あの子はいっつもああいう役だよな」


「へー…」


「面倒見がいいんだよ、気も利くし可愛いけどズドンと抜けてるんだよな」


「…確かに」


「あれでもっと色気があればいいんだけどな」


「ハハッ」


笑ってそこで彼女の話は終わった。
同僚の世話をする姿は小慣れていて、ナルホド長女だと思う。


「板橋は彼女いるの?」


「え?」


橋本さんに気を取られ話を聞いていなかった俺に突然振られた話題。


「いませんけど。何ですか突然」


「いや…女子社員に聞いてくれって言われたんだよ」


「…いるって言っといてください」


「なんでだよ!チャンスだろ!?」


「………」



チャンスって何だろう。



「余り興味ないです」


「マジで!?ウチの女子社員のレベルは高いぞ」


「ハハ、じゃあ俺には勿体ないですね」


「お前なら入れ食い状態も可能だろうに」


そして先輩は“健全じゃない”と俺に言った。
…入れ食いなんかする方が健全じゃねーよ。


「お前の好みを言ってみろ。俺が探してやる」


「…遠慮しときます」


「まあそう言うなって。…どんな子が好きなんだよ」


これは断っても面倒臭そうだと思い少しだけ考える。


「…そうですね、優しい子がいいです」


「は?中学生でも言わねーぞ」


「じゃあ家庭的な子」


「あー、結婚相手にはいいな」


「笑うと可愛い子もいいですね。ちょっと生意気で憎めなくて…しっかりしてるくせに危なっかしいような」


一体俺は誰の事を言っているのだろう。


その人の顔が浮かびかけて慌てて消した。



「…チカちゃん?」


「は?」


「それってチカちゃんじゃねーの?」


「………」



同僚をパタパタと扇いでいる橋本さんを思わず見た。
……それは全く頭になかった。





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