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大地の恋
第3章 プリズム
それから少しして夏の暑さを感じ始めた頃、ある日突然先輩が俺に言った。


「板橋、今日飲みに行くぞ」


「随分急ですね」


「前話したろ、総務の美奈子ちゃんがお前と飲みたいんだってさ」


そんな話聞いただろうか。



「誰ですか?」


「ホラ!言っただろ?お前が胸のデカイ子がいいって…」


「……言いましたっけ?」


「飲み会の時言っただろ!?とにかく、今晩可愛い子いっぱい来るからさ」


「いや…」


「お前来るって言っちゃったんだよ」


「勝手に話進めないでくださいよ…」


「お前俺の顔潰す気じゃないだろうな」


「無茶苦茶ですね…」


正直面倒臭いがこの人の勢いを振りきることは難しいだろう。


「……分かりました、少しだけ。でもすぐ帰りますよ」


「雰囲気良くなったらいいからさ、それまで頼むな」


先輩はバンバン肩を叩いた。
全く勝手な人だ。



……そんな飲み会も付き合いとしてなかったわけじゃないがいつの間にか付き合いの範囲でしかないものになっていた。


「変わったな俺も……」


元々そういったものは苦手だったから元に戻っただけなのか。
何にせよ気が進まないことだけは確かだった。



その日の昼は千花ちゃんを昼飯に誘った。



「千花ちゃん今日は弁当?」


「いえ、今日は社食で食べるつもりでいました」


千花ちゃんと昼を一緒に食うようになってから、彼女の弁当の回数は減っていた。
俺は純粋に千花ちゃんと飯を食う時間を楽しいと思っていた。
そしてそれはきっと彼女も同じなのだろう。


俺の誘いに犬のように尻尾を振り、ついてくる千花ちゃんを可愛いと思いながら社員食堂に向かう。


俺は日替わり定食、千花ちゃんはAランチ。
二人で話ながら食べていると知らない女子社員に声を掛けられた。


「板橋さん、今日はよろしくお願いします」


「はあ…」


一瞬何の事だろうと考えて、ブラウスがはち切れんばかりの胸を見て先輩の話していたあの人かと思う。







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