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大地の恋
第4章 再会
ーーーー何かが回り始めたことは俺自身も感じていた。
ずっと止まっていた俺の時間がぎこちなく動き出し、モノクロの世界がゆっくりと色づき出す…そんな感じ。
千花ちゃんと海に行ってから俺たちの距離はまた近づいた。
俺に救いの手を差しのべてくれたのは千花ちゃんだった。
何年も暗い海の底をさ迷っていた俺を引き上げてくれた千花ちゃんは、俺の中で特別な存在になっていた。
でも、その「特別」がどういった類いのものか…
俺はまだ考えようとはしていなかった。
「チカちゃん」
今日も千花ちゃんの周りをチョロチョロする林は目障りで、 柔らかすぎる態度の千花ちゃんがもどかしい。
「今度の休み映画行かない?」
「ごめんなさい…休みの日は用があって」
人目もはばからずデートに誘う林とは反対に千花ちゃんはチラチラと周りを気にしている。
「いつになったらまた俺とデートしてくれんの?俺ずっと待ってるんだけど」
「………」
そんなとこで黙ってるから林にいつまで経ってもつけこまれるんだ。
ここはビシッと言ってやれ!
もどかしい千花ちゃんとしつこい林に苛々しながら
父親みたいな気持ちで昼に上がる千花ちゃんを待っていた。
「あの…私、林さんとはもうデートできないです」
ーーーお?
「どうして?」
「……… 」
何故そこで黙る。
ハッキリ言ってやればいい。『私は板橋さんの事が……』
ーーーそこまで考えて我に返った。
別に千花ちゃんが俺を好きだという確証はない。
そう思ったことがなかったわけじゃないが、ああいう博愛精神に優れた子なら俺に対する言動だって取り立てて深い意味もないんじゃないかと今は思っている。
それに俺だって……