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Deep Emotion
第2章 始まりの予感
その日は一晩中びくびくと怯えていたけれど、私の悩みは杞憂に終わった。



翌日。特にクビ宣告の連絡もなく、私はいつもと変わらず仕事をしていた。

「ありがとうございました」

清掃を終えて『企画課』のフロアを出ると、「お疲れ様」と言う声が聞こえた。

お疲れ様、なんて言われたのは初めてだ。
挨拶して返事がなくても気にしていなかったのに、そんなこと言われるとすごく嬉しい。

嬉しくて、声がした方へ顔を向けると、そこには門倉さんが立っていた。

後ろには、昨日と同じ綺麗な女性が立っている。

「門倉、社長…」

「今日も仕事なんだね」

門倉さんは笑顔で私に近づいてきた。

「え、あ、まあ週5で入っているので…」

なんか、距離近い。それに昨日はちゃんと見てなかったけど、この人かなり顔が整ってる。

「仕事、終わるのは何時くらい?」

「え…、あ、16時すぎくらいです」

「それなら、16時半に秘書課に行ってくれるかな。エレベーターで秘書課のある18階に上がったら、彼女が待っているから、ついて行って」

彼女、と呼ばれた綺麗な女性が上品に微笑み、頭を下げた。思わず私も頭を下げる。

「じゃあ、16時半に」

私はまだ返事をしていないのに、門倉さんはさっさと行ってしまった。

…これって、決定事項なの?

16時半まで、あと2時間。よくわからない展開に混乱しそうな頭を落ち着かせるため、私は仕事に集中することにした。



約束の16時半、私はエレベーターで18階に上がっていた。

チン、と高い音がして、扉が開く。
エレベーターホールには、既にあの綺麗な女性がいた。

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

女性の後を、私はひたすらついて行った。
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