この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
──“灰ネズミ”とは、王都国立学校で名付けられたアリエッタのあだ名。
アリエッタは蜂蜜色の長く豊かな髪をきつく結い上げ、前髪は漆黒の双眸を覆うほど長い。纏うドレスはくすんだブルーグレイで古びていて。いつも俯きがちなせいで姿勢も悪く見える。
上流の令息令嬢が通う学校ではアリエッタは異質で、気位の高いマデリーヌのような人間からしてみたら、同じ学校で学んでいるのも赦せないのであろう。
「言わせておけば……! アリエッタはねえ……」
「ニーナ!」
「あ……」
アリエッタの制止にニーナはしまったと口を慌てて閉ざす。
「アリエッタが……なに?」
喰ってかかられたマデリーヌは釈然としない様子で聞き返してきた。
アリエッタは無言で駄目よ、とニーナに訴える。
それ以上言われては、アリエッタは学校にいられなくなるからだ。
.