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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会



 ──“灰ネズミ”とは、王都国立学校で名付けられたアリエッタのあだ名。


 アリエッタは蜂蜜色の長く豊かな髪をきつく結い上げ、前髪は漆黒の双眸を覆うほど長い。纏うドレスはくすんだブルーグレイで古びていて。いつも俯きがちなせいで姿勢も悪く見える。


 上流の令息令嬢が通う学校ではアリエッタは異質で、気位の高いマデリーヌのような人間からしてみたら、同じ学校で学んでいるのも赦せないのであろう。


「言わせておけば……! アリエッタはねえ……」


「ニーナ!」


「あ……」


 アリエッタの制止にニーナはしまったと口を慌てて閉ざす。


「アリエッタが……なに?」


 喰ってかかられたマデリーヌは釈然としない様子で聞き返してきた。


 アリエッタは無言で駄目よ、とニーナに訴える。


 それ以上言われては、アリエッタは学校にいられなくなるからだ。





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