この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
背後には三人の女性が立っていた。声をかけてきたのはおそらく真ん中の赤毛の女性だろう。少し尖らせた唇は、まだ物言いたげだ。
アリエッタは赤毛の女性に見覚えはあるが、名前までは知らない。
豪華なドレスと高慢な顔付きや雰囲気から、高い地位であるのは窺える。
「マデリーヌ……」
ニーナの忌々しげな呟きにマデリーヌは曲線を描く眉を吊り上げる。
「あなたごときに呼び捨てされる覚えはないわ」
「そうでしたね。グリオッド侯爵令嬢様」
言い直すニーナであったが、その眼差しは冷ややかで。悪びれてもないのは眼に見えている。
「ここは神聖なる学舎〈マナビヤ〉。そういった下世話なお話はよそでしてもらえない?」
「マデリーヌ様。仕方ありませんわ。“変人ニーナ”と、ほら……」
マデリーヌの右隣の女性が侮蔑を含む視線をアリエッタに投げてくる。
こんな風に見られるのは頻繁にあり、アリエッタは俯いて視線から避けた。
「そうね。“灰ネズミ”のアリエッタ……だったかしら? 二人に品位を求めるほうが無理というものね」
マデリーヌは嘲笑し、眼を眇めた。
.