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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会



 背後には三人の女性が立っていた。声をかけてきたのはおそらく真ん中の赤毛の女性だろう。少し尖らせた唇は、まだ物言いたげだ。


 アリエッタは赤毛の女性に見覚えはあるが、名前までは知らない。


 豪華なドレスと高慢な顔付きや雰囲気から、高い地位であるのは窺える。


「マデリーヌ……」


 ニーナの忌々しげな呟きにマデリーヌは曲線を描く眉を吊り上げる。


「あなたごときに呼び捨てされる覚えはないわ」


「そうでしたね。グリオッド侯爵令嬢様」


 言い直すニーナであったが、その眼差しは冷ややかで。悪びれてもないのは眼に見えている。


「ここは神聖なる学舎〈マナビヤ〉。そういった下世話なお話はよそでしてもらえない?」


「マデリーヌ様。仕方ありませんわ。“変人ニーナ”と、ほら……」


 マデリーヌの右隣の女性が侮蔑を含む視線をアリエッタに投げてくる。


 こんな風に見られるのは頻繁にあり、アリエッタは俯いて視線から避けた。


「そうね。“灰ネズミ”のアリエッタ……だったかしら? 二人に品位を求めるほうが無理というものね」


 マデリーヌは嘲笑し、眼を眇めた。







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