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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ
再び問われ、止まっていた思考が巡り始める。巡ったはいいが、返答に窮する。
「あの……」
「これは?」
レオはアリエッタの周囲に無造作に広げられる破り取られたスケッチブックの紙を拾い上げた。
アリエッタは残りをささっと掻き集め、すっと立ち上がった。レオもアリエッタに倣い立ち上がる。
こくんと咽頭を震わせ、アリエッタは深々と頭〈コウベ〉を垂れた。
「レオ……ナルド様」
ゆるゆると持ち上げ様に彼の真名を呼ぶ。
レオは眉をしかめ、髪を掻いた。
「セドから聞いたらしいな。やめてくれ、今まで通りでいい」
そう言うとレオはアリエッタの脇を通り抜け、ベンチの足許にしゃがみこみ何かを拾った。
「忘れ物だ」
レオは拾った物を掲げ、アリエッタに見せる。二週間前にアリエッタも手にした懐中電灯であった。
彼は懐中電灯を取りに温室へと赴いたらしい。
「それで? アリエッタはどうしたんだ?」
「私は……」
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