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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ
──ドンッ
アリエッタが開いた扉は出ていく前にレオが閉じてしまった。
「なにを……!?」
「神へ嫁ぐのはあなたの意志か?」
琥珀の瞳に射抜かれ、アリエッタは息を呑む。真実を話したところで何かが変わるわけではない。今までだってそうだったじゃないか──。
「そうです。私は自らの意志で神へ嫁ぎ、生涯仕えていくのです。レオナルド様、その手をお離しください」
「いいや、離さない。アリエッタ。あなたは俺との約束を果たす義務がある。それまでは神だろうが誰だろうが、あなたを渡しはしない」
「ですからそれは先程謝罪致しました。鍵はお返ししましたし、レオナルド様のお時間を戴いたのに心苦しいとは思いますが私……」
「アリエッタ。その口調もやめろと言ったはずだ。また唇を塞がれたいか?」
苛立ちを滲ませる彼を前にアリエッタは口を閉ざす。憤っていても魅惑的な彼の美貌は一切損なわれない。
「どうしても行くというなら仕方ない。神の花嫁を拐うしかないようだな」
レオは腰を屈めるとアリエッタの膝裏に腕を回して、片腕でアリエッタを抱き上げた。
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