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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係



 アリエッタはその部屋でナキラによって本来の美しい姿へと塗り替えられた。まず前髪を切り、シャボンが泡立つ浴槽で頭のてっぺんから足の爪先まで磨きあげられ、花とハーブから精製されたアロマオイルを肌に塗られ。


 波打つ柔らかな蜂蜜色の髪を丁寧に梳かれて編み込まれ、デコルテが大胆に開きふくよかな胸を強調したレースがふんだんに使われた菖蒲色のドレスを着せられた。


 アリエッタは当然どの行程もやんわりと断った。


「アリエッタ様。私がレオ様に怒られてしまいます。それでもいいんですね?」


 ナキラは断る度に瞳を潤ませ、アリエッタを説得してきた。本当に怒られるのであれば気軽な口調の時点で怒られているだろうが、アリエッタは彼女の訴えを真に受け、自分のせいでナキラが怒られてはいけないとされるがままになった。


 長い前髪越しでない世界は新鮮であったが戸惑った。これも言い付けのうちのひとつであったから。


 だが切るのを断ればナキラが困ることになる。


 髪のことだけでなく部屋やアリエッタのために仕立てられたかと思うほどのピッタリなサイズのドレスなど困惑することばかりだが、疑問をぶつける相手が今はいないのだから、されるがままにならざるを得なかったのだ。







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