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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係
レオの邸を散策しているうちに使用人専用の別棟を見付け、そちらに移動したいと願い出た。それの返答は──。
「どうしてもあそこに移りたいのか?」
「はい。どうしても」
「そうか、なら仕方ない。アリエッタが譲らないと言うなら壊すとするか」
いっそ爽やかなまでに恐ろしいことをさらりと言ってのけたのだ。
それはそれは神々しい笑顔で言ったあと、執事のジョシュアを呼びつけて業者を呼ぶ算段をしだしたものだから……。
「あの部屋でお世話になりますから……壊すなんてやめてください!」
蒼白になって止めた。
自分のせいで建物がひとつ壊されれば、働く全ての使用人たちが困るではないか、と。
さらには焦りで慇懃な言葉使いになり、ジョシュアの目の前でキスされる羽目になり、散々だった。
部屋のことは諦めたアリエッタもせてめ働かせて欲しいと申し出た。
ただ絵を描いているだけで、ただ飯を喰らい、温かなベッドで寝るわけにはいかないから、と。
これにはアリエッタは譲るつもりはなかった。
レオの赦しがもらえないのであれば、赦してもらえるまで食事を抜く覚悟はある、それでも首を縦に振ってもらえないなら邸に置いてもらうわけにいかないと。
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