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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係
しかしナキラは別の方向で窘めてきた。
「アリエッタ様。どこの世界に客人に働かせる主人がいると思います? レオ様は確かに寛大でいらっしゃいます。私たちにも寛大でいらっしゃって、大抵のことは眼を瞑ってくださいますし、邸にいる者は皆家族だっておっしゃってくれてます。
王太子というお立場を鼻にかけたりもなさいませんし、この邸にいる間はレオ様ご自身が寛げるよう、私たちが伸び伸びと仕事が出来るよう、気兼ねない態度でいるよう命じられてもおります」
セドリックが以前話していたのを思い出す。王太子という立場はレオに窮屈な想いをさせているのだろう。
だからここの人たちはレオから王太子の立場を一時的にでも忘れさせるため、気軽な口調を叩くのだ。
「でもそれとアリエッタ様を働かせるのは別問題ですよ。主人が許可されてないものを私たちが見過ごすわけにまいりません」
「ごめんなさい……。本当は解ってるの。働きたいのは我が儘だって。皆さんとても有能で、私に手伝えることだってないのも解ってる。でも……」
もう前髪で覆われていない黒目がちの大きなアーモンド形の双眸が、苦しげに揺れた。
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