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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係



「私も手伝っていい?」


 仰天し、花壇の雑草退治の手を止めていたキッシュの横に屈み、雑草を抜き始める。


 以前のお邸でもしていた仕事で、手慣れた手付きで抜いていく。


「アリエッタ様って変わってますよね。お嬢様方は肌が焼けるの嫌がって、わざわざ土に汚れる仕事なんてしたがらないのに」


「そう……? 私は気にならないわ。厳しい仕事だけれど、土に触れてるのは好きなの。それに心をこめて丹念に育てた花が開いたときは嬉しいでしょ?」


「うーん、僕にはよく解らないな。僕はこれしか脳がないから。あ、それ草じゃないです」


「ご、ごめんなさい……」


 アリエッタが抜こうとした緑に眼を留めたキッシュに教えられ、慌てて手を引っ込める。


「小振りだから草と間違えがちなんですけど、白くて可愛い花が咲くんですよ」


「そうなの? 咲いたら見てみたいわ」


「見れますよ。あ、そっちは葉に触れないでくださいね。肌がかぶれちゃうんです」


「気を付けるわ」


 『脳がない』と話すキッシュだが、多くある植物の特色を細かく覚えているのは立派な才能だ。


 アリエッタが感心した眼差しを送っていれば、キッシュはぽつりぽつりとあることを語りだした。





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