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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係


「ほお? 誰が何を好きだって?」


 出先から戻ってきたレオが片眉を上げ二人を見下ろしていた。


「レ、レオ様!? お……お帰りなさーい。あ、ぼ……僕あっちの仕事しなきゃだった! じゃあね、アリエッタ様!」


 キッシュが逃げるよう去っていくのに呆気に取られる。


 アリエッタは不機嫌そうに立っているレオを見上げ、身体を竦めて立ち上がった。


「お帰りなさい……」


「その格好はなんだ? 俺はまだ働くのを赦した覚えはないぞ」


「これはその……」


「言い訳はいい。アリエッタ。あなたは何をしにこの邸に来たか覚えてるのか?」


「は、はい……。絵を描くためです」


「解ってるなら結構。とりあえず着替えてこい。夕食を一緒にしよう」


「……はい」


 夕食と聞いて眼を伏せるアリエッタをレオは眼を眇めて見たが、何も言わず踵を返しかけた。


「忘れるところだった」


 俯きがちなアリエッタの頤〈オトガイ〉に指をかけ掬い上げると、レオは口づけを落とす。


「んっ……!」


 ぬるりと入り込む肉厚の舌がアリエッタの口腔を蹂躙していく。


 舌が絡まるとぞくぞくと肌が粟立ち、ガクガクと膝が震える。


「よほどあなたはキスをされたいらしいな」


「ち……ちが……っ」


 キスをされ潤んだ瞳で睨んでみても効果は薄い。


「ハハッ! ではあとでな」


 赤くなった顔を隠すよう、麦わら帽子のつばを両手で引き下げ深く被った。



 



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