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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係
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夕食とアリエッタの準備が整うまでの間、レオは執務室で重厚な樫の木の机に向かい、書類に眼を落としていた。
日に何度か王城から各領地の現状を記されたものや、それに伴う改善策やら税金の見直し、他国との交易状況などが届く。
国王である父に代わって執務を執り行い始めてから随分と経つ。重要な案件であっても適切に判断し、裁決を下していく。
──トン、トン
「レオ様、失礼します」
「ああ」
レオが返事をするとジョシュアがいつもの気難しい顔で入ってきた。
25歳という若さで執事に任命した彼はレオも認める優秀さで、プラチナブロンドの髪と蒼い双眸を持つ美丈夫だ。
長い付き合いになるが、ジョシュアが冗談を言ったり口を開けて笑ったりしたところを見たことがない。
今も無表情のまま執務机の向こうで直立し、そして綺麗に一礼した。
「例の件、口を割りそうな者を見つけました」
「やっとか。引き続き説得に当たってくれ」
「畏まりました」
ジョシュアだけはいくら言っても従者という立場を崩さず、生真面目な話し方をする。
「どうした? まだ何かあるのか?」
余計な会話を好まない彼が去ろうともせず、蒼い双眸を向けたままだった。
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