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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係



「……タ、アリエッタ」


「……え? あ、はい……あ!」


 心を閉じ、耳を塞いでいたアリエッタに、不意に届いた声にハッとなりビクリとなってしまった拍子に指がフォークに引っ掛かり床へと転げ落ちた。


「ご、ごめんなさい」


「アリエッタ」


「……あ」


 落ちたフォークを拾おうと立ち上がりかけたアリエッタをレオがやんわり諫める。落とした食器を自分で拾うのはマナー違反。それを窘められたと気付き慌てて座り直す。


 壁際で控えていたジョシュアが無駄のない動きでフォークを拾い、新しい物をテーブルに置いた。


「ごめんなさい……」


 ジョシュアの動きにもビクビクとし、膝の上で指を丸めそこに視線を注ぐ。


「アリエッタ、何日かぶりに食事を共にしてるんだ。そう暗い顔してくれるな」


「ごめんなさい……」


 謝罪を繰り返すばかりのアリエッタをまえに、レオはテーブルに両肘をつき嘆息した。


「こっちを見ろ」


 レオに言われ、忌々しいとなじられた記憶のある漆黒の双眸を恐る恐る向ける。


 レオはフォークを指で挟み、その指を静かに開けた。






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