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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係



 カチーンと大理石の床に金属がぶつかる音が広いダイニングに響く。不可解なレオの行動にアリエッタは眼を丸めた。


「あのな、これしきのことで怒る人間はこの邸にはいない」


 続いてナイフまで落とし、スプーンに指をかけたときにジョシュアが颯爽と落ちた食器を拾い上げ、睨み上げながら脇に立った。


「レオナルド様。お行儀が悪いですよ」


「……まあ、約1名口煩い奴はいるが」


 レオは悪びれもせず、小さく肩を竦めた。


「こいつもこんな仏頂面してるが悪い奴じゃない。こんな顔してるくせに趣味は刺繍ときてるしな。一度部屋を訪ねてみるといい。部屋だけ見たら女性の部屋かと……」


「……私の趣味がなにか?」


「いやいや、人は見かけによらない部分もあるってだけだ。……でだ。話は逸れたが、ここには無闇やたらと叱りつける者はいない。そんな奴、俺は傍に置いてない。だろ?」


 壁際に戻ったジョシュアに同意を求めると、ジョシュアは「仰せの通りです」と単調ながらも柔らかな声で言った。





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