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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係


 話があるからとアリエッタもお茶を勧められ、椅子に腰掛ける。ラベンダーティーを喉に通すと、緊張が少し和らいだ気がした。


「仕事の件なんだが、アリエッタには俺への茶の給仕を頼みたい」


「お茶の給仕を……?」


「なんだ、不満か?」


「い、いえ。私に出来るのってそれだけ?」


 アリエッタはここの侍女には劣るけれど、掃除や縫い物、お菓子作りもなかなかの腕前だ。


 だがレオが考えてくれた末に与えてくれた仕事が給仕だけであり、アリエッタにはそのくらいしか出来ないだろうと言われたようで落胆が隠せない。


「いや、実は……。ああ、いい。なんでもない」


 レオは言いかけた言葉を呑み込んでしまい、何を言いかけたか気になり身を乗り出す。


「なに? 私にお役に立てることがあるなら言って? 給仕も立派なお仕事だけれど、それだけで置いてもらうのは心苦しいの」


「本当になんでもいいのか?」


「ええ、私でいいなら」


「良かった。これはアリエッタにしか頼めない仕事だから」


「私にしか?」


 不要とされることのほうが多かったアリエッタは、僅かでも必要とされてるんだと感じると気持ちが上向いてしまう。


「頼まれてくれるか?」


「ええ、もちろんよ。私に出来るならやらせてもらいたいわ」


 内容は解らないが、なにかと良くしてくれるレオのためならば……と、ふたつ返事をした。






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