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隠匿の令嬢
第5章 獣の邸と淫らな教育係
暫し冗談めかして話していたレオが笑顔を収めたのでアリエッタも背筋を正す。
レオは肘掛けに肘をつき、頬杖をつく。
「アリエッタへ頼みたい教育というのはだな……」
「ええ」
「実は、俺には意中の令嬢がいるんだ」
「──え?」
レオが真面目な顔をしてアリエッタを見詰め、アリエッタもまばたきを忘れ見詰め返す。
レオに意中の……令嬢?
胸の内で反芻すると、ざわりと心が波立った。
「もう何年も前から想いを寄せている」
アリエッタは気の利いた相槌も打てず、漆黒の双眸を揺らす。お茶を飲んだばかりだというのに喉がカラカラになり、張り付いて息苦しい。
前にニーナからレオの女性関係を聞かされたときより胸も痛いくらい縮み、鋭い刀の切っ先でぐりぐりと抉られたようになる。
「アリエッタ? 聞いてるか?」
「……え? あ、ええ……。そうなの。それで?」
なぜこんなに苦しいのか解らず、なんとか笑顔を取り繕い、続きを促す。
だがアリエッタの胸中は急激な時化が起こったよう荒波が襲いくり、ランプが消えてしまったと思うほど目の前が真っ暗だった。
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