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隠匿の令嬢
第6章 恥じらう乙女と卑猥な遊戯
アリエッタは寝台から飛び起きた。全身汗をかき、呼吸は乱れ、動悸は早鐘を打ったようだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
目覚めたばかりのアリエッタの双眸は薄闇で見開かれ、なにも映してない。
荒く息を吸っては吐き、ナイトドレスの胸元をきつく握りしめる。もう一方は上掛けをギュッと握っていた。
「また同じ夢……」
独りごつアリエッタの声は薄闇に溶ける。
ここ数日、同じ夢ばかりを見る。原因はひとつしかない。
彼女の言いつけを破り、彼への忠心を優先させたからだ。
異性に肌を晒し、触れることは赦さないと言った彼女の言葉を、レオを幸せにする手伝いのためだと言い訳し、触れられる悦びを覚えだした身体から眼を逸らし、彼女に知られていないのをいいことに破った結果だ。
──解ってる。これは裏切りだ。
その事実からも耳を塞いで考えないようにしているのに、罪の意識だけはアリエッタに絡み付いている。
だからきっとこんな夢を毎日見るのだ。
罪の意識が蔓延る心と、快楽に溺れていく身体との狭間で、アリエッタは引き裂かれそうになっていた。
だがそれだけではない。彼との甘美なひとときは紛い物で、永遠に向けられることのない彼の心を思い知る度、抜けない棘が刺さっていくようだった。
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