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隠匿の令嬢
第6章 恥じらう乙女と卑猥な遊戯
レオの容姿は誰よりも美麗で華やかで、月色の髪や琥珀色の瞳も魅惑的だ。それに王位を約束された王太子でもある。だから農夫などと印象を抱くのでさえ失礼な話であるが、アリエッタは彼の生き様や色彩から得られた印象を口にする。
「私達の口に入る食べ物は、農夫たちが毎日、毎日精魂こめて畑を耕し、水をやって。暑い日も寒い日も、毎日、毎日作物が枯れないよう……。そうしてやっと育った作物は人々を満たし、潤していくわ。でも、農夫たちが実際口にするのはほんの僅かであったり……。
私達は食事をするとき神の恵みに感謝するでしょ? でも農夫たちにはあまり感謝しないわ。彼らがいてこそ神の恵みが届けられるっていうのにね」
人は他人の苦労を忘れがちだ。裕福な生活に馴れれば尚のこと。誰かの不幸など顧みず、自分の暮らしをひたすら守ろうとするものだ。
アリエッタは……いや、アリエッタも時々忘れそうになる。だから何度も刻み込む。人によって生かされているのだと。
そうして逢ったこともない農夫たちを思い浮かべたとき、不意にレオの姿と重なった。
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