この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
アリエッタが見ている“色彩”。それは眼に映るものではない。かといって霊的な類いでもない。
言うなれば感覚的なもの。人や草木、建物や大地や空の本質的な色合いをアリエッタは感じることが出来る。
男から滲み出る色は、アリエッタのこれまでの人生……16年と少しではあるが、出逢った誰よりも複雑で豊かで、生命の強さとそれとは裏腹な黒い死の匂いまで纏っていた。
アリエッタは無意識にその場にしゃがみこむとスケッチブックを開き、鉛筆を走らせていた。
人を描きたいと思ったことなどなかった。描いたのは昔頼まれた一度きり。自分から特定の人物を描きたい衝動に駆られたのは初めてで。
無我夢中で彼を描いてしまっていた。
.