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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
アリエッタの鉛筆を走らせる音と時おりページを捲る音がどれくらい続いただろうか。
夢中で男を描いていると、彼の瞳が開かれアリエッタを琥珀色の双眸に映していることに気付き、アリエッタは凍りついた。
アリエッタは瞠目し、男と見つめあう。
永遠にも近い時間に感じられたが、実際のところは数秒間。金縛りにでもあったかのよう動けず、思考も停止させていれば。
男は金色の髪をくしゃりと指ですき、起き上がる。
そしてアリエッタとスケッチブックを交互に見遣り、小さく小首を傾げた。
「その絵の肖像権は主張させていただいたほうがいいですか?」
低く甘さを孕んだ声で問われ、アリエッタの血の気は一気に引いた。
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