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隠匿の令嬢
第7章 危険な一夜
ルードリアン男爵がアリエッタへと視線を向ける。
「しかし驚きましたなぁ。お連れの方がいらっしゃるとは聞いておりましたが、こんな美しいご令嬢をお連れになるとは」
『ハッハッハ』と上機嫌に笑う男爵にアリエッタは眼を見張る。
アリエッタは男爵と何度か会っていて面識がある。しかしどうだ。この口調からはアリエッタを知らないと言っているようではないか。
最後に会ったのはもう何年も前だ。解らなくても仕方ないか、とアリエッタが口を開きかけたとき。
「もう、着いてこないで! あたしに構わないでよ!」
「あたしが行く方向にニーナがいるだけよ?」
「あっそ! じゃあお先にどーぞ!」
「それはダメ。レディーファーストって言葉知らないの?」
と、懐かしい声が騒がしさを引き連れ、近付いてきた。
「いやはや、お恥ずかしい。娘なのですがお転婆に育ってしまって……」
その声に男爵は困ったように白髪混じりの髪を掻く。その騒がしい声は邸の奥から顔を出す。
「もう、いい加減に……」
ルードリアン男爵の愛娘にしてアリエッタの唯一無二の友人であるニーナはレオと、そしてその後ろで控えるアリエッタを眼に留め固まり、あんぐりと口を開けたと思えば叫んだ。
「ア……アリエッタぁぁぁぁぁ!?」
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