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隠匿の令嬢
第7章 危険な一夜


 アリエッタはグラスが口許に近付けられ、背中にレオの手が添えられても呆と見詰めている。


「ほら、呑んで。多少は楽になるから」


「私、喉渇いてませんよ? それに辛くもありません」


「ったく」


 レオはひとつ嘆息し、グラスの水を自らが口に含む。そしてアリエッタを引き寄せ、口づけた。


「……んっ」


 アリエッタは口移しで呑まされる水を苦しそうに、だが吐き出すことなく飲み下す。


 唇の端からは呑みきれなかった水が流れ、首筋を伝った。


「ハァッ」と薄く開かれた唇から悩ましげな溜め息を洩らすアリエッタ。彼女の頬にレオは手を添え、親指の腹で伝う水を拭う。


「まだ呑むか?」


 アリエッタはレオの問いには答えず、頬に添えられる手に自らのそれを重ね、頬を擦り寄せた。


 その顔は愛しそうに、だがどこか憂いを帯びた表情。


「レオ様。────くださいね」


「え?」


 何事かを呟くアリエッタの声はあまりにも小さくて、レオには届いてないようだった。問い返してみるレオにアリエッタは満面の笑みを向けた。







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