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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
アリエッタはそれからすぐニーナを見舞った。ニーナの体調はかなり酷いらしく、起き上がれもしなかった。……自業自得ではあるが。
二度と酒は口にしないとうわ言のようにアリエッタに言っていた。話すのも辛そうな状態であったので、レオと出掛ける旨だけ伝え、早々に部屋を出て。
そしてレオの最後の不可解な指示に従い、ナキラを呼ぶと、なぜか下町の娘のような──アリエッタが当初着ていた地味なドレスに着替えさせられた。
支度が済みレオを訪ねれば、彼も普段より地味な格好で。上着は古ぼけた焦げ茶のジャケットとよれたシャツ、トラウザーズも継ぎはぎのあるグレイ。これも下町の若い男がよく着ている服装だ。
しかし彼の纏う気品はどんな格好をしていても隠しようがなく、服がみすぼらしい分、一層際立っているようにも見えた。
普段と違うのはレオだけでなく、同行しているジョシュアまでも執事のお仕着せを脱ぎ下町風だった。
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