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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影





 アリエッタを見守りながらジョシュアと歩くレオ。不意にジョシュアがこう漏らす。


「アリエッタ様、本当にお愉しそうですね」


「……ああ。あれが本来の彼女の姿なんだろうな」


 小さなことに感動し、子供のようにくるくると表情を変え、飛ぶように歩き。


 蜂蜜色の髪を靡かせ少女のようで……それでいて時おりドキリとするほどの艶もあり。


 擦れ違う男たちの視線を集めるアリエッタの美しさは彼女自身はまるで気付いていない。




「例の件は進んでいるか?」


 レオはアリエッタから眼を離さず、声を潜めて問う。誰に聞かれるとも解らない場所でする話にしては物騒であるが、彼は少々焦ってきていた。おそらくきっかけは昨夜のこと。


 アリエッタを早く解放してやりたい気持ちが募っていた。


「何名かこちら側に協力をしてもらえそうな者はおりますが……」


「なんとか引き入れろ。金はいくらかかっても構わん。今後の生活も保障すると言え。それでも駄目ならこちらの身分を明かしても構わん」


 ジョシュアはなにか言いたげであったものの、レオの横顔に察するものがあったのか「畏まりました」とだけに留まった。


 レオはそれを聞くと蝶のごとく飛んでいくアリエッタを捕まえに、足を早めた。







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