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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
レオが追い掛けてこようとしたちょうどその時、アリエッタは花売りの子供たちに囲まれた。
「お花買ってください」
一本のガーベラを差し出す少女。彼女の小さな手は傷がいくつもあり、草の汁で汚れていた。
きっと彼女が自ら摘み、売っているのだろう。
買ってあげたいのはやまやまだったが、アリエッタには持ち合わせがない。
他の少女や少年もこぞってアリエッタに花を差し出す。
「ごめんなさい、私……お金が……」
「これで足りるか?」
アリエッタに追い付いたレオが金貨を一枚少女に持たせる。子供たちが持つ全ての花を買い占めても余るお金に少女は金貨とレオを交互に見遣った。
「みんなで分けてくれ。代わりにそのガーベラ貰えるか?」
少女は戸惑いつつ、レオにガーベラを渡す。そして少女の頭を撫で、レオが微笑むと、少女も満面の笑みを返してみんなと走り去った。
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