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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影



 ガーベラ一本に金貨を払う者など、レオ以外いないだろう。もし居たとしても貴族の傲慢に見えてしまうかもしれない。


 けれどレオがやると不思議なことに傲慢に見えず、優しさからきているように思える。


 アリエッタは柔和な笑みを浮かべ、レオを見上げる。と、そのアリエッタにレオは今しがた買ったガーベラを髪に差し込んだ。


「うん、よく似合ってる」


 蜂蜜色の髪にはピンク色のガーベラがよく映え、彼女の美しさに文字どおり華を添えた。


 アリエッタは気恥ずかしく俯き「ありがとう」と消え入りそうな声で言う。男性が女性を褒めるのはマナーだ。そうと知ってはいても、胸の高鳴りを抑えることは出来ない。


 伏せていた瞼をそっと上げれば神々しいまでのレオがアリエッタを見ていて。


 そのレオが長い睫毛を伏せ目がちに見せ、ゆっくりと近付いてきた。アリエッタもレオと引き合うよう瞳を伏せれば──。







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