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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
──コホン。
わざとらしい咳払いが耳に届き、ハッとなって咳払いの元を向く。
「お二人とも。そういった不埒な行為は、二人きりのときにお願いしたいですね」
ジョシュアがアリエッタたちに向け、咎める視線を送っていた。
「兄上? こういう時は見てみぬ振りをなさるのがマナーですよ」
レオは「なあ?」と同意を求めてきたが、自分がなにをしようとしていたかを改めて突き付けられた気がしたアリエッタは、みるみる顔を真っ赤に染め上げた。
「わ、私……あちらを見てきます!」
アリエッタは居たたまれず、レオたちの元から走り去る。
──私ったら、なんてことを!
ここは街中だ。そうでなくとも、レオの“教育”の最中でもなければペナルティでもない。
それなのにキスをしようとしてしまったのを恥じ、そして混乱した。
上手く思考を纏めようにもドキドキと煩く鳴る心臓を前に、考えが纏まらない。
ただ頬が熱く、髪に刺さるガーベラがむず痒かった。
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