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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
常にひっ詰めて結んでいた艶のない髪は、ナキラが毎日必ず使うようにと一瓶ずつ渡す乳香の石鹸で艶を取り戻し、肌も荒れきっていたのが今や陶器のよう滑らかで。
漆黒の双眸を覆っていた長い前髪も流れるよう整えられ、くりっとした瞳は伏せ目がちであればあるほど色香を漂わせ。
主張し過ぎない鼻は女性らしい膨らみで、桃色の控え目な唇は綺麗な曲線を描いている。
自分たちが馬鹿にし、嘲ってきた灰ネズミがこうも変貌し、魅入ってしまう美しさを備えていたのだから言葉を失わずにはいられないだろう。
「今日は1日気分が良かったわ! マデリーヌのあの顔ときたら! 見た? アリエッタだとわかった途端、魚よのうに口をパクパクさせちゃって!」
帰りの馬車もニーナと共に乗り、馬車の中ではニーナはいつになく上機嫌であった。
「ニーナったら……。私は一日居心地が悪かったわ。見世物小屋の動物にでもなった気分よ」
アリエッタは好奇の視線に晒され、疲れきってしまっていた。
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