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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影


「ニーナ、ごめんなさいね。あなたにまで迷惑かけて」


 ニーナがひとしきり笑い終えると、アリエッタは切り出した。


「またその話? 今朝も聞いたわ。それに迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないわよ。あたしとアリエッタの間に遠慮は無用よ」


「ありがとう、ニーナ」


「お礼を言いたいのはこっちだわ。マデリーヌのたかーい鼻を折ってやれたし、アリエッタと一緒に学校へも通える。それもレオナルド様の賢明なご判断のお陰ね」


「……ええ」





 ニーナとこうして共に馬車に乗り、通学している事の始まりは前夜の夕食時であった。


 レオに『気楽にしろ』と言われて以来、苦手だった豪奢なダイニングでの食事を少しずつではあるが会話を交わせるようにもなり、緊張せず、コックが腕によりをかけた料理の数々を味わえるようにもなってきた。


 これもレオの気配りからで、日々感謝せずにはいられない。


 昨夜も執務を切り上げたレオと夕食を共にしていたとき、こう告げられた。


「明日から学校へは一度ルードリアン男爵の邸に馬車で行ってから、ニーナ嬢の乗る馬車に乗り換えてくれ」





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