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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
このやり取りがあったから、現在もニーナと馬車に乗っているわけであるが。
「本当に賢明でいらっしゃるわ。セドにちょっとばかり声をかけられたあたしがマデリーヌにどれだけ嫌味を言われたか……。王太子のレオナルド様と懇意にしていたら、学校中の女性から嫌がらせ受けるわよ」
ニーナはわざとらしく身震いし、脅しつけてくる。けれどアリエッタは自分の身に恐ろしいことが降りかかろうが、破滅しようが大して気にはならなかった。
恐ろしくないと言えば嘘にはなるが、本当にこのままでいいんだろうかという思いが勝っていた。
しかしレオとの繋がりを隠すのは、実際にはレオにとってはいいことであろう。
レオには想い人がいるのに、アリエッタがレオの邸に住んでいると広まってしまえば、彼にとっては醜聞にしかならない。
だったら尚のことアリエッタは身を隠し、絵を描くのに集中していたほうが良さそうなものの、レオはアリエッタを学校へ通わせたがった。
彼の真意が汲み取れないでいるまま、また日々が過ぎた。
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