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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影



 男が女遊びをするのは普通のことである。貴族や王族の男ならば尚のこと。女中や未亡人に手を出すなど、当たり前のように溢れている。


 ひと昔前と違い、女も性に奔放な時代だ。男の女遊びに理解ある女性も多い。


 だが全ての男女がそうとは限らない。純潔を重んじる男もいれば、奔放に女に手を出す男を赦せない女もいる。


 レオの意中の女性がどんな人かは知らないが、奥ゆかしく男女の仲に疎い人であれば、レオが特定の女性と噂が立つのを良くは思わないかもしれない。


 だからこそアリエッタはレオが隠そうとしているなら、出来得る限り協力しなければと思ったのだ。



「キミがどうしてもと言うのであれば、そうしよう。しかしいいのかね? 後世に名を残す大作となるかもしれないのに」


「いいえ、教授。私は名など残したいとは思いません。ただ好きな絵をこうして描けているだけで幸せなんです」


 アリエッタは迷いなく告げる。


 どんなに長くとも五ヶ月もすれば絵を描けなくなる。修道院へ行き、神に仕える身とならば、その日生きていくのもやっとな生活になる。


 名を残すよりも今は絵を描く喜びを噛み締めたいのだ。







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