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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影


「キミがそうまで言うならなんとかしよう」


「ありがとうございます」


 これで万一ギルデロイの個展でレオの絵を誰が描いたか尋ねてくる者がいたとしても、アリエッタとの繋がりが露見せず済むかもしれない。


 小さな安堵の溜め息を漏らしていると、アリエッタのスケッチブックをパラパラと捲るギルデロイは、独り言のように呟いた。


「それにしてもオナルド殿下は立派に成長されたものだ。お小さかった頃も利発でらっしゃったが、懐かしい限りだよ」


「教授はレオナルド様をご存知なのですか?」


「ん? ああ。儂がまだ宮廷画家をしておったときに殿下と何度かお逢いしたことがあっての」


「そうだったんですか。……あの、教授。教授はレオナルド様の絵をご覧になったことはありますか?」


「なぜだね?」


「以前にレオナルド様が絵を描くのは苦手だとおっしゃってたので」


 話を聞いてからアトリエを訪れたレオに絵を描いてみてと頼んだことがあった。だがレオはのらりくらりと躱して、描いてはくれなかった。


 そうすると余計に興味が湧く。しかし無理強いも出来ず、幼少のレオを知っているギルデロイならもしやと思い尋ねたのだ。





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