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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影


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 ある日、ニーナが風邪をひき、学校を休んだ。アリエッタは男爵邸へと朝赴いた際にニーナの体調を聞かされ、ニーナを見舞ってから一人で馬車に乗り学校へと行った。


 ひどい風邪ではなかったが、声が枯れ、熱も少しあるとのことで一日中ニーナが気掛かりだった。


(大丈夫かしら。早く良くなればいいのだけど)


 昼に一人でサンドイッチを芝生の上で食べいるときもニーナのことを考えていた。


 アリエッタの容貌が変わっても、中身がガラッと変わったわけでもなく、今でもニーナ以外とほとんど話さない。


 だからこうして一人で食事をしているのだが。



 そのアリエッタに一人の令嬢が近付いてきた。


「アリエッタ? アリエッタ・ベオグラードよね?」


「え? あ、はい」


 その令嬢にアリエッタは見覚えがなかった。同じ講義を受けていれば顔くらいは知っていそうなものなのに。


 しかし彼女はアリエッタの名を言った。どこかで逢ったことがあるのかと記憶を巡らせていれば。


「これをあなたに渡して欲しいと頼まれたの」


 そう言って彼女は一通の手紙をアリエッタに渡した。







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