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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
「私が……私がリリスに怪我を負わせてしまいました」
リリスの怪我を聞きつけ、出先から戻った父の前で、アリエッタは震えながら告げた。
「なんてことを……っ!」
リリスと同じ淡いキャラメル色の白髪混じりの髪は乱れなくきっちりと後ろに流し、鋭い眼はこれもリリスと同様のオリーブグリーン。
その父が絶望と怒り、蔑みの色をアリエッタに隠しもせず向けていて。
「お前は何をしでかしたか解っているのか!? リリスは生涯あの傷を背負って生きていかなければならないんだぞ!? お前はリリスに恨みでもあるのか!?」
父は厳しい人であり、アリエッタがなにか失敗をすれば咎めてきたりはしたが、こんな風に声を荒らげて怒鳴りつけてきたのは初めてだった。
だからアリエッタは妹であるリリスに恨みなどないと否定したかったが、あまりの恐ろしさと衝撃で首を振るのも出来ず。
竦み上がり、ガタガタと震えているだけで。
「もういい! お前の顔など見たくもない!」
父がそう言い放つまで微動だに出来なかったほどだった。
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