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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
それからというものアリエッタは床に臥せっているリリスを毎日部屋に訪ねた。
庭の花を摘んで持っていったり、リリスが大好きなお菓子を差し入れたり。それでリリスの気が少しでも休まるなら……怪我の償いになるならばと、思い付く限りのことをした。
リリスは我が儘なところはあったが、アリエッタによく懐いていたし、仲のいい姉妹であった。だから怪我のせいで出ている熱が下がれば、また今までのように仲良く出来るのでは……と、幼さからくる甘い考えを持っていた。
リリスに付きっきりの母も、甲斐甲斐しく通うアリエッタに慰めの言葉をかけてもくれたりした。
そして熱が下がり、痛みも大分引いてきたリリスは、事故当時の記憶がほとんどないようで、事実アリエッタに以前のように笑いかけてもくれたりした。
だが父はそうではなかった。リリスが動けるようになり、手も使えるようになってもアリエッタにそれまで以上に厳しく接してきた。
それまでも長女であり後継者でもあるアリエッタには特別厳しく、リリスは甘やかし、ことさら可愛がっていた父は、それが如実になりだした。
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