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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由

 アリエッタへの扱いは年を追うごと、日を追うごとに過酷なものとなった。


 後継者でなくなったのだから、教養やダンスのレッスンもする必要がないからと一切やらせてはもらえなくなり、代わりにとでも言いたいよう、家の手伝いをさせられた。


 まるで使用人かのよう、庭の雑草を取らせ、食器洗いや食事の用意まで。


 それでもアリエッタはいつかリリスに、そして父母に赦されるのではないかと我慢し、愛される努力をした。


 父やリリスの好物はアリエッタの得意料理となったし、母が大切にしている花壇の花は特に念入りに手入れをした。


 どんなに詰られても、辛く当たられても文句ひとつ言わず、ひたすら耐えた。


 辛いときほど笑顔でいるようにも心掛けた。


 泣きたいときもあったが、リリスに怪我を負わせたのは自分だから仕方ないのだと言い聞かせてきた。


 ──“いつか”。そんなもの永遠に訪れるはずもないと、思い知らされることにはなるのだが。






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