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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由



 プレゼントが貰えなくなったその年。誕生パーティーさえも開いてはもらえなかった。哀しみに打ちひしがれるアリエッタに追い討ちをかけるよう、リリスは言う。


「お姉さまは悪い子だから、お祝いなんてしちゃいけないのよ?」


 ──と。


 アリエッタのパーティーにかかる費用の分はリリスに回されたのであろうか。リリスの誕生パーティーはそれまでより盛大に行われた。


 アリエッタはその場に参加もさせてもらえなかった。


 人々の笑い合う声や音楽、美味しそうな料理の匂いを陰で見ているだけ。


 唇を痛いくらい噛み締め、耳を塞いでも聴こえる音に胸が痛んだ。


 堪えきれずひっそりと独りで泣いたりもした。


「お姉さまに泣く権利なんてない! 泣きたいのは私よ!」


 いつだったか独りで泣いているのをリリスに見付かり、そう言われてしまったことがあった。



 その通りだと思った。リリスは女の子だ。年頃になってきたアリエッタとリリスに、醜い傷痕は重たくのし掛かり、二人の仲を、そして父との仲を更に裂いた。






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