この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
プレゼントが貰えなくなったその年。誕生パーティーさえも開いてはもらえなかった。哀しみに打ちひしがれるアリエッタに追い討ちをかけるよう、リリスは言う。
「お姉さまは悪い子だから、お祝いなんてしちゃいけないのよ?」
──と。
アリエッタのパーティーにかかる費用の分はリリスに回されたのであろうか。リリスの誕生パーティーはそれまでより盛大に行われた。
アリエッタはその場に参加もさせてもらえなかった。
人々の笑い合う声や音楽、美味しそうな料理の匂いを陰で見ているだけ。
唇を痛いくらい噛み締め、耳を塞いでも聴こえる音に胸が痛んだ。
堪えきれずひっそりと独りで泣いたりもした。
「お姉さまに泣く権利なんてない! 泣きたいのは私よ!」
いつだったか独りで泣いているのをリリスに見付かり、そう言われてしまったことがあった。
その通りだと思った。リリスは女の子だ。年頃になってきたアリエッタとリリスに、醜い傷痕は重たくのし掛かり、二人の仲を、そして父との仲を更に裂いた。
.