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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
「お姉さま? どうして何もおっしゃってくださらないの? 口がきけなくなってしまわれたのかしら」
クスクスと愉快げに笑うリリスからアリエッタは一瞬たりとも視線を外せず戦慄していた。
彼女が怖いのではなく、彼女と対面することで自らの罪と対峙するのが怖いのだ。
スカートに隠れた細く白い脚はガクガクと震え、心臓は不規則で不穏な音を奏でる。鼓膜の奥では耳鳴りがし、体温は氷水に浸かっているかのよう下がり続けた。
「……もう一度訊きますわ。休暇中はどこでお過ごしになられてましたの? それにその格好はどうされたんですか?」
リリスはふっと笑いをおさめ、声色もワントーン落とされた。
「……ッ」
アリエッタは無意識に一歩後退る。
「わ……私……」
漆黒の双眸を揺らし、アリエッタは頭〈カブリ〉を振る。
「どうなさったの? ご自分のことですわよ? 知らぬ存ぜぬ……なんてことはありませんわよね?」
一歩、リリスが同じだけ距離を詰めた。
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