この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
「気持ちが届かない方と情交を結ばれたお姉さまが一体どうなるか……私、見てみたいの。失恋されたお姉さまも素敵よ? でもね、お姉さまが私との誓いを破ってまで好きになった方の心がないと知りながら、抱かれる様を想像すると、もっとずっと素敵な気がするわ」
リリスはふふっと笑う。アリエッタはこの上なく戦慄〈オノノ〉く。
「む、りよ……。私……神に……」
「それなら心配ないわ。お姉さまは世間知らずだから知らないでしょうけど、修道女には色々な事情を抱えた方がいるのよ? 未亡人や過去に犯罪を犯してしまった人や、それこそ娼婦であったり」
二つも下の妹から衝撃的なことを言われたよりも、リリスはどうあってもアリエッタにことを起こさせるつもりだということが恐ろしい。
その裏でアリエッタは諦めの感情を抱きはじめていた。
リリスにはアリエッタの行動を決める権利がある。
それだけのことをアリエッタはリリスにしてしまった。
彼女の輝かしい未来をアリエッタは奪ってしまったのだから。
美しい令嬢はいくらでもいる。公爵の娘という価値を差し引いても、傷のある女を娶ろうという物好きな男はいない──少なくともリリスはそう考えてしまっている。
彼女をここまで歪めてしまったのは、アリエッタだ。
微かな抵抗も、その事実の前には脆く崩れ落ちていく。
.