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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
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寄宿舎に戻ったアリエッタは食事を摂り、浴室で身を清め、あてがわれている部屋に戻って簡素な机の前に座った。
この寄宿舎に学生はアリエッタ一人きり。元々は王都国立学校に従事している人のための寄宿舎だ。学生は皆貴族の令息や令嬢ばかり。講義が終われば馬車に乗り邸に帰る。しかしアリエッタは邸には帰らず寄宿舎で一年間身を寄せることになっている。
ここでは食事の準備以外、身の回りのことは全て自分でする。邸に住んでいた頃も、縫い物や食器の片付け、庭の手入れや掃除に至るまでこなしていたので苦ではない。
一日のほどよい疲れを覚えながらも、木枠の出窓から射し込む月明かりに本を照らし、勉学に励む。
けれど集中出来ない。
ハアッと悩ましげな溜め息を零し、本の横にそっと佇む鈍色の鍵に視線を落とした。
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