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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
正常な状態のアリエッタであれば、こんな夜中に薄着でまず出歩かないであろうし、遅くまで出掛けていたレオを気遣って訪ねたりはしないだろう。
だが今のアリエッタはリリスの声に操られた人形同然。
レオに抱かれ、傷付かなければならない──。
『私と同じ苦しみを味わって』
『もっと! もっとよ、お姉さま!』
リリスの声が頭の中にずっと響いている。
彼女がそう望むのならばそうしよう──アリエッタはその思いだけで動いていた。
だらりと垂れていた腕を持ち上げると、2回ノックをする。
アリエッタは暗がりで静かに待っていれば、薄く扉が開かれる。
「……アリエッタ?」
抑えた声でレオは驚きを見せる。
夜更けだろうが昼日中だろうが、アリエッタからレオの部屋に足を運ぶことはなかったのだから当然だろう。
「どうかしたのか?」
アリエッタは視線を伏せており、問いには答えない。
リリスの声ばかり響いて、レオの声は殆んど聴こえていないのだ。
怪訝そうに見詰めるレオも視界に入ってない。
すべては彼女の願いを叶えるため──。
レオが大きく扉を開いた瞬間、アリエッタは進み出て、リリスの声に従った。
「……私を抱いてください」
レオの胸に寄り添い、アリエッタは単調に告げた。
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