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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──






 アリエッタが部屋を出てから暫く経ってもレオは寝台の縁に座り、掌に顔を埋めて動けずにいた。


 アリエッタから部屋に訪ねてきたときから、変だとは思っていたし、なにかあっただろうことは予想はついていた。



 抱いてくれなどとアリエッタらしからぬ台詞を耳にしたときも、疑ったほど。


 だがアリエッタがそれを望み、囚われているものから逃れられるなら叶えたいと思った。


 しかしどんなに熱く口づけても、唇や指で肌を愛撫しても、いつもの甘やかな声で啼かない。


 もしやと思って柔らかな下肢に触れてみれば、反応の兆しさえ見せていなかった。




 男の矜持を傷付けられたショックよりも、未だアリエッタの中の己の存在の小ささが悔しかった。


 過ごした時間は短くとも、あそこまで追い詰められているアリエッタの心に触れることさえ叶わなくて。


 理由を話せずとも、肌を触れ合わせることで、僅かでも心を溶かせられれば──と思っていただけに、悔しさからくる苛立ちを制御しきれなかった。







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