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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──



 だがやはりアリエッタの様子が気になり、重たい腰を上げてアリエッタの部屋へと行く。


 人が行き来しない邸は思いの外ノックの音がよく響く。


 ノックしてからも部屋からは物音がせず、レオは怪訝に眉を寄せる。


「アリエッタ? 開けるぞ」


 断りを入れてから扉を開けば、気配がない。


「アリエッタ、いないのか?」


 ざわり、不安に波立つ。


 寝室も、バルコニーも、浴室もアリエッタの姿がない。


「まさか……」


 レオはハッと息を呑む。


 アリエッタの性格を考慮に入れてない浅はかな言葉を口走った。そうと気付いたレオは邸に部屋を構えているジョシュアとナキラを叩き起こした。


「他の者も全員起こして邸中アリエッタを探せ!」


 眠そうにしているジョシュアとナキラに指示を出せば、二人は弾かれたように意識をはっきりさせる。


「俺は外を探してくる」


 口早に言えば、慌ててジョシュアが止めた。


「いけません! 私がお探ししますからレオ様は」


「命に従え」


 レオはジョシュアの制止を最後まで聞くのも時間が惜しいとばかりに、短く言い放った。


 レオは自身の剣を携え、邸をあとにした。





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