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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
男に連れられるまま身を任せていたアリエッタは細く薄汚い路地に誘い込まれた。
鼻息を荒くし、相変わらず下卑た笑みを口許に滲ませる男たちは、建物にアリエッタを押し付けた。
「さっきから喋らないな、この女。阿片でもやってるんじゃないだろうな?」
「まあ、いいじゃないか。下手に騒がれるよりましだ。たっぷり愉しませてもらおう」
呆然と立ち尽くし、男たちがトラウザーズのベルトを性急に外しているのも空虚な面持ちで見ていれば──。
キン……と金属の甲高い音が路地に鳴る。
「斬られたくなくば、立ち去れ」
耳に馴染んだ声にアリエッタの虚ろな瞳が微かに揺らめく。
その声は凍り付くほど冷たいものであるが、確かに彼のそれだった。
アリエッタを連れ込んだ男たちはベルトに手をかけたまま、ゆっくりと声の方に首を捻る。
そこには乱れた月色の髪と、侮蔑を迸らせる琥珀色の双眸をしたレオが、剣の切っ先を男たちに捉えていた。
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