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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
手首を掴まれ、引いても引いても離れない。
必死で振り払おうとするアリエッタをレオは奥歯を軋ませ、そして無理矢理肩に担ぎ上げてしまった。
「やぁ……っ! 下ろしてください!」
レオの肩で暴れるアリエッタ。
「黙ってろ」
より強くアリエッタの身体を腕で締め付け、レオは闊歩する。
アリエッタの視界は反転し、レオの背中しか見えないが、怒っているのは声色から明らかだ。
常に悠然としているレオを日に何度も怒らせ、リリスの願いも叶えられそうにない。
もうどうしていいのか──哀しいのか悔しいのか、情けないのか辛いのか。様々な感情が混沌として。
暴れるのは止めたものの胸の内は荒れ狂う。
いっそ狂ってしまえたら楽になるのに。
レオの肩の上で歩みのリズムに合わせて揺られるアリエッタは、血が滲むのではないかというくらい唇を噛み締めていた。
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