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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
邸に戻ったアリエッタを、ジョシュアを始めとした使用人たちはこぞって世話を焼きたがった。
だが「呼ぶまで誰も来るな」とレオが一蹴し、自室へと連れ込んでしまった。
レオはアリエッタをぞんざいにソファーに下ろす。腰と尻を打ちつけた衝撃で、僅かに苦痛で顔を歪める。
「何を考えてるんだ!? こんな夜中に薄着で出歩けば、男に襲われても文句は言えんぞ!」
レオに怒鳴りつけられ、アリエッタは肩口を揺らす。
憤りを抑えるかのよう、掌で両目を隠し息を整えるレオ。
「……俺が駆け付けたからよかったものの……」
鎮めた声にも憤りの名残があった。
アリエッタは俯き、固く結んだ唇を弛める。
「……よく、ありません」
か細くはあるがレオの耳に届く程度の声が発せられ、レオはぴくりと眉を震わせた。
「なに?」
「……なぜ放っておいてくれなかったの? せっかく……願いが叶えられそうだったのに」
虚ろだったアリエッタの瞳はいつの間にか色味を取り戻し、感情が宿っていた。
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